無上

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無上

2014.12.28

今年最後のコラムとなります。

一年間、私の拙コラムを読んで下さったかたに感謝申し上げます。

 

最後もはやり玄侑さんの書からです。

「多生の縁」より。松原泰道僧との対談のなかにいいお話しがありましたので抜粋します。

松原泰道僧は、ご存じのかたも多いと思いますが、臨済宗妙心寺派の長老ともいうべき方で

4年ぐらい前に101歳で亡くなられています。私も、ご著書を数冊拝読しておりますが

心ある頭のいいお坊さんとの印象をもっております。

 

「自立」や「アイデンティティ」を求めすぎる現代

玄侑:この頃は子供に「自立しなさい」とか「個性をもちなさい」ということをあまりにも

早くから迫りすぎているような気がします。やはり仏教的な見方からすれば、人間というものは

間柄や関係性でつくられているものですから、「私はこうなのだ」ということをスピーディーに

作り上げることもないと思いますね。アイデンティティなんていうものは、棺桶のふたがおさまった

時に初めて決まるものであって、それまではいろんな自分がいて、どんどん変化するものだと教えて

あげたほうがいいという気がするんですね。確固としたアイデンティティを持ち、何事も即断即決

でき、必要ないものは切り捨てるというような「個性」ばかりを求めすぎている。

松原:なんでも割り切ろうとする考え方。ちょっと怖い感じがしますね。

玄侑:自殺の多さとも関わるのでしょうが、「自分が何者か分からない」と悩む子供たち、あれは

個性がないのではなくて、お前は何者なのか早急に言えと迫られて、言えないだけだと思うんです。

そんなに早く答えを求めなくてもいいと思いますね。

だって、泰道先生は93歳になられて、今なお学び続けるとおっしゃっているわけですから。自分が

何者かという問題は、一生追い求めていくものだし、死ぬ直前に分かればまだいい方じゃないですか。

私が小説に書いた「中陰」も、人が死んでから生まれ変わるまでの、あるかないか分からない存在の

ことです。世の中に分からないことはたくさんあるし、それを分からないと認めた方がいい。

松原:分からないからといってあせる必要はないですね。私は今世で分からなかったら、来世で分かる

ように努めようと思っています。昔、旧制一高の生徒で「人生不可解」と言って、華厳の滝から

飛び込んで自殺した藤村操という人がいますけど、本当は不可解と分かっただけでもすごいことなのであってね。

短い人生で何もかも割り切っていこうということは、傲慢ですね。無知を知ると、自然に謙虚になっていく。

仏教用語では、「無上」と申し上げます。上限がないんです。上がれば上がるほど、大空を上がっていく

ように上限がない。

玄侑:常に途中にあるわけですね。途中ですけれども、途中にある充実感を感じればいいのでしょうね。

雪もまた涼しかりけり~

2014.12.2

曹洞宗の祖、道元禅師の有名なお言葉ですが、私もたいへん好きな言葉です。

 

元来私は暑いのが苦手です。理由は、いくら暑くても、服を脱ぐのには限界があるからで

寒ければ着込めばいいだけの話です。

私は冬場でもよほどのことがないがぎりは、診察室と手術室で暖房はいれません。頭の上から

温かい空気が降りてくる状況ではいい仕事ができるはずがありません。

 

道元禅師の「雪もまた涼しかりけり~」は、人間は”寒い”と口に発すれば、必ず暖を求めにはしります。

が、”涼しい”とおもえば、まだこれぐらいなら頑張れる、という気概につながる。

そういうことを、禅師は仰っているのだとおもいます。

 

特に私は17年間、山陰で生活しましたが、山陰とこちら関西とではそれほど平均気温に差はありません。

こちらでは最近、”今日は寒いですね”が挨拶言葉になっていますが、山陰ではあまりそういうのは聞いた

ことがありません。おそらく山陰の人たちは”雪もまた涼しかりけり”とおもっておられるのでしょう。

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